アンプタ

 ……KClのアンプルをじっと見つめるようになった。
 どうしようもないほどの息苦しさと腹痛と、
 そうだね、頭痛と耳鳴りはもともと悩まされていた症状だったけど
 それはさらに悪化していたと思う。
 挨拶に声を返したいのに返さなきゃと思う程に、
 声が出せない、しゃべれないわけでもないのに。
 急がなきゃと思う程、やらなければと思うほど、
 体は動かない、頭は何をして良いのかがわからない。

 それが最後の一週間で、
 終わりの始まり、始まりの終わり。
 予想と予感はもっと前から有ったのだけれど
 流石にそうなってくると危機感さえ感じて
 通話ボタンを押したときの気持ちはすがるような気持ちが半分と
 ……崩落を感じるような気持ちが半分。

 診断はあっさりとついて 事は進んで
(ちなみに告白はさほど悩まなかったし抵抗もなかった)
 そうして現状にいたる……が今の状況。
 正直、とうとう大義名分を手に入れてしまった、っていう
 そんなのが今のところの感想。

 ……だって、もしかしてその背景にかくれていたかもしれないものは
 今もまだ、暗闇の中を漂っているままだもの。

 どこかに落として置き去りにしてきたかもしれない
(あるいは初めからそんなもの欠落していたのかもしれない)
 何か名のわからない、けれど『フツウ』の人が『フツウ』に
 生活していくための何か、情緒だったり、コミュニケーション
 能力のひとかけらだったりする何か、それは私の中にまだ
 何も見つけられていないままだもの



※ケンサクシテハ イケナイ コトバ

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