あたしがわざわざ腹をいためて産んでやったっていうのに
この化物め
あんたはあたしから幾つ奪えば気が済むんだい?
ハップを貼っても、ワインで顔を洗っても
魔女といわれるのを覚悟で薬草を使ってみても
あたしはどんどん老いていってあんたの若さにはかなわない
わかっているさ、あんたはあたしの娘なんだから
おや? 年老いたあたしをそんな嫌悪の目で見るのかい?
あんたもいずれはこうなるさ
だがね!!
あたしは待てなかった
あたしはあんたに復讐したくてたまらなかった
子供みたく我侭にふるまっておきながら
いったいあんた、あたしの
化物め
毒を塗った櫛を刺しても
首をしめても
今度こそはと思って差し出した毒リンゴをかじっても
おまえはなおもこうしていきてるのかい?
今度はその隣りの奴の
なるほど、おまえは魔女の子だ
そしてとうとう己の母を手にかけるのかい
ああ、いいさあんたは化物だ
あたしが産んだ化物だ
だからよく聴いておおき、あたしのこの最期の叫びを
これはあんたへの呪いの言葉
この死の舞踏が終っても
この声はこの地に木霊し続ける!!
※参考文献、『本当は恐ろしいグリム童話』(笑)。中世はキリスト教一色の暗黒の時代である一方、今のような性道徳はなかったんですね。
母親→白雪姫の母親は初版本では継母ではなく実母だったそうです。
薬草→当時のヨーロッパでは薬草を使う、黒猫を飼う、箒に跨る(?)などは魔女の証とみなされたそうです。
死の踊り→娯楽のない当時、人々にとって公開処刑は結構大きな娯楽だったようです。処刑とか結構残酷です。そのうちの一つに、焼けた鉄の靴を履かせる、と言うものがあるんですね。これを履くと熱くて飛び跳ねて、でも火傷で皮が鉄にくっついまままだからそれを履かされた人は延々踊り続ける……と。