「確かに。其の刃確実に此の身を貫き、そして僕の命を奪うんだろう」
寧ろ、喜んですら居る位に平静に。彼は彼女に向けて呟いた。
「……随分冷静ね? 自覚は無いの、今自分は殺されかかっているっていう」
それでも刃を握り締めたまま。彼女は彼に向けて言葉を紡ぎ出した。
「……さあ? ひょっとしたら今僕は無性に死にたがっているのかも知れない」
けれど、彼は微妙な笑みすら浮かべて。
「恋人に裏切られたショックから?」
彼女もまた、彼に答える様に。
「『恋人』だったの? 僕らは」
そう、言葉を紡ぎ出した。
二人は其処で思わず笑い出した。
「……そう……確かにね。けど、私は此処であなたを殺さなきゃならない」
幸福とは一体何なのだろう。
「それで君が幸せを掴めるのなら」
或いは、存外に。
「……幸せだと思う? あなたの居ない世の中で生きていくのが」
取り合えあず。無言で居たのが、彼の選択肢。
「……意味、ないわ……あなたの居ない世の中で生きていたって」
ただ繰り返される、日常の会話――
「……?」
不審気に。彼は彼女の名を其の口から漏らした。
「でもね……此の刃は其れでも血を欲している。ねぇ、悲しいとは思わない? 私たちを結び付けてくれた筈の此の刃は、同時に私たちを引き裂かなきゃならないの」
彼女は、涙を流した。
「……君が望むのなら」
其れが。彼が出した最後の答え。
選択肢は、幾つもあったはずなのに。
けれど其れでもむかえるエンディングは結局同じ。
どれがグッドエンディングで、どれがバッドエンディングなのかも判らないような終わり方だけが、常に二人に残るもの。
グッドエンディングはけして此の2人にはやって来ない。
会話と地の文がかみ合ってない(というか、互いに独立している)文章、結構好きで良く書いちゃいます。