「happy birthday! 一日早いけど、な……」
それが、彼の呟いた最後の一言だった。
彼女の腕の中で、彼は力なく首を項垂れる。
「……涙すら出ない……」
異様に大人びた雰囲気を有した少女は、異様に大人びた台詞を口にして、異様に大人びた事を想っていた。
――また。
また、死んだ。
自分の目の前で。
自分の大切な人が。
彼女は人の弔い方を知らない。
或は死を悔やむ気持ちすら。
「『ハッピー・バースデイ』……」
呟く。
意味も、無く。
本来であればそれは、祝福の言葉。
だが、自分にとっては?
そもそも此の世に存在している事自体が間違いである、自分にとっては……?
……これからは、祝福の言葉になってくれると想っていたのに……
そんな事を想ってはみるが、それが意味を為さない事も同時に理解している。
――過去は変わらないのだから。
『これ』もたった今、過去になったのだから。
過去を取り戻す事も、過去へと帰ることも、それは叶わぬ夢なのだから。
涙は……やはり出ない。
わかってはいた。理由も無く。
いつか、こういう日がくる事を―――
「バカ。」
徐々に温みを失いつつある少年の骸に謂ってやれる言葉を……
彼女はそれ以外にわからなかった。
※これは……えっと、確かクローンの女の子の話だったかな? ストーリーは完成してないです。シーンだけがあります。