(なれ)は彼の地より来たれり
  我は(なんじ)が定めなり
  ()は我の使者であり
  ()は滅を意味せり
  御座(みざ)いと(くら)きに在りて
  (やいば)夜を表わせし(とき)
  ()を朱に焼かば
  (へみ)大いなる
  時空(そら)より来たる
  ()の大いなりし誓約為れば
  ()の無からましかば

 ◆ 簡約 ◆

 貴方は、其の地からやって来たのですね。
 私は貴方の『運命』です。
 其れは私の僕であり
 此れは『破滅』を意味します
 御座(おんざ)がとても暗くに在って(覇者の統治は乱れて)
 刃は夜を示す時
 大きな蛇が大きな時空を渡ってやってきます。
 此れはとても重大な約束事だから
 其れが無かったのなら……



 其れは、遥か古(いにしえ)の事。
 其処には人と、神々と、魔族とが共に共存し合って居た世界が在った、と謂う。
 しかし、世界を治めし二人の太陽神は咎を犯し。
 人々は文明の発達と共に信仰心を無くし、より大きな『力』を手に入れ。
 そして――其れは、在る意味で当然の事だが神々と魔族とは対立し。
 やがて、大いなる戦はおきた。
 別名、死神戦争。
 此の、歴史を語る上で欠く事の出来ぬ大きな戦争の勝者は……人間だった。
 皮肉な事に、神にも魔族にも、決して何にも縋らない人間だった。
 魔族は其の種族が滅びる事と引き換えに、総ての大地に己らの瘴気を吹き込んだ。
 神族は其の事を悔やみ、生き残った人間達に秘術を授けた……此れもまた自分達の滅亡と引き換えに。
 そして。
 其の秘術は――
 『魔術』と呼ばれた。

 ……旧い神話である。


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