(前回からの続きと思いねえ…シオンのいないところで作戦会議?)

翔「結局わかんないまんまだったね(でもなんかホっとしている)」
珪「んー、しかし、あれもだめ、これもだめとなると……」
カイ「後はもう押し倒して襲うしかないなっ!(笑)」
翔「ちょっとカイさん……」
ルーク「カイ、ところで何してるの……? 爪真っ赤にして」
カ「マニキュア塗ってるって言えよ……。んー、たとえば魔方陣。縦横斜めに足してすべて同じになる数字を組み合わせるだけで、そこに数の悪魔が住み着く。例えば優れた絵画。人を別世界に引き込む芸術という名の魔術。これらも魔術のひとつ。ならば化粧も自分を見るものに『魅了』をかける魔術のひとつ、って考えることができる。まぁ要するに、俺は完璧主義者でね。ちょっとばかり……」
翔「あ、なんかやな予感」
カ「ひと稼ぎ、してきますわ(にっこり) ということで食事当番のほうは各自で分担してくださいね」
といって部屋を去ろうとする女狐版(笑)カイ、扉を開けたところでちょうどケインが立っていた。
カ「きゃ。(もちろん女版はここまでやります)」
ケイン「カイ…何してるんだ?」
カ「ちょっとわけありでして(にこやかに笑ってそくささと去る)」
そして、カイが過ぎ去った後の作戦会議室。
珪「よく気づいたじゃねーか。まえにレイのこと女と間違えたくせに」
ケ「ってゆーか前にあれに引っかかった…。あーあ、ホントにシオンのほうが女だったら良かったのに」
翔「あれ? じゃあ、カイさんの言ってたことってやっぱり違うの?」
ケ「いや、真相はわからんが、事情が事情だし、わざわざそんなことする意味もなー…。それに……」
珪「それになんだよ?」
ケ「カイが何かたくらんでないと思うか?」
一同「……(重たい空気)」


そして。その日の晩。なんとも都合良く、シオンと同室の翔です。

(うあ、どーしよ、なんかどきどきする……)
シ「? どうかしたか?」
当然、いつもと変わらないシオンと。
翔「え?」
シ「いつになく珍しく俺のことを観察する」
目のやり場にさえ困ってしまう翔。
翔「そ、そんなことないよ、ごめん、気にしたんなら謝るよ」
どうにもこうにも、なんとも危なっかしい雰囲気が流れている。
シ「…そうか? ならいいが……」
といって洗面所のほうへ向かうシオンにたいして。
翔「あ、ちょっと待ってシオン」
といって翔はなんだかとっさの勢いで立ち上がりシオンに近づこうとするが。
そして。これもまた都合よく。
翔「わっ、ごめんシオン」
あわてた翔は見事につまづき、勢い余って、なんだか本当に"押し倒し"てしまった。
シ「髪……」
翔「え?」
シ「髪ほどけた…編みなおせ」
偶然指が髪紐に引っかかったらしい。起き上がると、さらさらでつやつやの長い長い蒼い髪が揺れた。
目の前にいるのが翔だけだから、わざわざ隠す必要もないと思ったのだろう。
翔「あ、ゴメン……すぐに直すね」
といってシオンの髪を手にとってみるものの。細い項、白い肌。
そんなものばかりが目に付いて。
この局面を、打開せねば。
思い切って、翔が口を開く。遠まわしに聞くより、ストレートに言ったほうがいい。
翔「あー、あのね、シオンって…」
シ「どうかしたか?」
そして。
翔「シオンって、もしかして女の子なの? カイさんにそう聞いたんだけど……」
翔は問うてみた。
シ「……。はぁ!?」
しばしの沈黙の後、思わずシオンが声を上げる。
シ「(! そーかそーか、どーりで皆の様子がよそよそしいと思ったら!!)カイにいぃっ!!(呼べば来るのか…? でもシオンさまなら可能かも)」
翔「あ、カイさんなら出かけてってしばらく戻らないって…」
シ「逃げやがったか……」
翔「ゴメン、シオン、俺そんなつもりで言ったんじゃなくって…。何か事情があるとか言いたくないっていうなら」
シ「……信じたのか?」
ずい、っという効果音とともに、翔にアップで迫るシオン。
翔「(ちょっとたじってる)いや、信じたって言うか…。だってほら、シオンって顔立ちきれいだし、あと背も低くて声も高めだし…」
シ「……(実はちょっぴり傷ついたらしい)その言葉、そっくりお前に返していいか?」
それでも傷ついてなお毒はいて復讐しちゃう辺りがシオンである。
翔「……(話題転換)。あ、そーだそれに肌とかぜんぜん見せたがらないし!! 隠すし!!」
シ「ああ、なんだこれのことか…。」
と呟いて服を脱ぎ始めるシオン。
翔「わ、ちょっ……」
シ「だから言ったろ? 背中に大きな火傷の跡があるって」
そういってまだまとめられていない長い青い髪を背から胸の前にたらし。さえぎるものが幾筋かの絹糸のごとき髪になった白い背中を翔に向けてみせる…。
翔「綺麗…だね」
思わず、翔はそう呟いた。
シ「ただの火傷の痕だ。本当にそう思うか?」
ケロイドというよりは、ある種よくできたタトゥーのようにも見える。
そう、まるで。
翔「うん、天使が羽広げてるみたい…」
まるで、それはまるで、翼のような模様。
シ「で? これで『疑い』は晴れたか?」
翔「あ、うん…(あ、なんかやな予感)」
シ「ちょうど今日は髪を洗おうと思ってたんだ。もちろん頼めるな?」
これだけ長い髪を、洗って乾かして手入れをしてまとめなおすのは。
なかなかの重労働でちょっとカイに感心してみたりした翔である。


さて、そのころケインと同室の珪は。

珪「だあ〜っ 納得いかねぇ」
ケ「いーかげんあきらめたらどーだ? いくらなんだってもうそろそろ夜もおせーんだし」
ひまつぶしに、とはじめたカードゲーム、珪は自分が勝つまで納得しないくせにケインはどうしてもこういったものが得意である。
珪「ドーテイのホモ野郎に注意受けるいわれはねぇ」
ケ「なっ…!! おい、俺は!!」
珪「だからホモなんだろ? シオンに色目使いやがって」
ケ「っ!! 俺はそんなシュミはねぇ!!」
珪「なに? オンリー系ホモ?」
ケ「だ・か・らー。そだ、それにシオンが男ってまだ決まったわけじゃないぞ」
なぜか役立つカイの策略。
珪「あ、まあな…。しかしまさかシオンに惚れた理由が五歳のときやさしくしてくれた初恋の人のおねえさんにそっくりでー、とか言う落ちはやめと…けってまさか図星?」
どよぉん、とし始めるケインの周りの空気。
ケ「5歳じゃなくて10歳のときだ……。それに、まあ、やさしくはしてくれたけど、何っていうか、守ってやりたい……みたいな」
珪「(笑ってる)おまえがぁ? どんなやつだよ、そりゃ」
ケ「だから、こうきれいで長い髪で、目は大きくて、シオンがまんま(女として)で成長したような…」
珪「(やっぱり笑い転げてる)」
珪君、君は決してケインのことを笑えないのでわ…?
ケ「うるせぇっ…。悪かったな、それでも俺にとっては大切な思い出なんだよっ!」
珪「ふぅん、じゃあお前その人が目の前に現れたらシオンよりそっちとるんだぁ」
ケ「……(うつむきがちに)それは…ありえねーよ。あの人はもう死んでるし――それに、俺はもし現れたとしてもシオンを」
シオンを? 本当に選べるか? いや、そもそも選んでいいのか?
ふとそんなことが頭をよぎり。ケインは言葉を止めた。そして、ふと思いつく。
ケ「酒――だな、こういうときは」
珪「ま、それは悪くねぇ、か……」


そして翌朝、珪とケインの仲がちょっぴりよくなってたとかなかったとか。
翔のシオンに対する態度はなんか余計にちょっとドキマギしてしまったりしたとか。
カイは(本人いわくちょっとした情報収集へ行っていたらしい)思ったより早く帰ってきたとか。


それはまた、別の話――



ヲハリ。(終わっとけ!!)



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