if it rains

 ああ、いらいらする
 早く過ぎ去ってほしい
 けれど
 それなのに、この中途半端な感じが
 小気味よくさえある
 ボーダーラインにあるものが大好きだ
 まあ、それは自分の趣味だからかえようがない
 十年以上、長く付き合ってきたこの憂鬱だから
 かえって楽しむ癖がついたのかもしれない
 人間という機構としては
 それは正しい判断だ

 この特性がいつから身に付いたものだったのか
 後天的だったんだか
 それとも生まれつきだったんだか
 それは知らないし、わからないし、
 まあ、知ったからってどうにかなるものでもないから
 わかろうとも思わないけど
 いつもこうだ
 この、雨が降る前の日の憂鬱
 それに拍車をかけるような頭痛
 ああ、順序としては逆なんだっけ?
 まあ、でも自分にとって重要なのはその現症で
 それが、自分の気分をいちじるしく障害するということ
 この『予感』が、ほかの原因の頭痛や微熱とは区別がつかないでかたをするから
 またそれが憂鬱

 気晴らしに、窓を開けてみる
 とにかく何か行動してないとだめだし
 外部からの情報を入れたほうがちょっとはましになる
 もしかしたら、それが途切れるまでの時間が計れるからなのかもしれない

 ああ、ちょっと砂くさいにおいする
 雨のにおいと、冷たい風に混じった夜のにおいも
 独特の……けれど、なぜか自分の好きなにおい
 きっと、今日の星空は望めないことだろう
 それは残念だけど、これはありがたい

 すっと、頭痛が消えていく
 重たい鉛の塊が頭の中に打ちこまれたようだったのが
 ふいに溶け出すような感じに
 からだも、妙に楽になる
 もやがかかった思考が晴れる

 ――さあ、明日は一日部屋に閉じこもって、何をしよう?
 うきうきとさえする思考
 ああ、いけない
 でも、明日は出かけなきゃならない用事があったんだっけ
 まっくもって憂鬱じゃないか



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