銀縁の眼鏡の奥から、黒の双眸が覗く。
まだ少年のあどけなさの残るそれには、そのやたらと細長っこいめがねや、手にしたブラックの缶コーヒーはあまり似合うとは謂い難い。寧ろ少年の背伸びしたさを象徴させて、可愛らしさすらある。しかし、それこそ少年から男性への進歩の入り口なのであろうか。
彼は『気に入っているから』の一言で変装以外には必要ない伊達眼鏡をはずす気配も無ければ、余計なものは嫌いだからとブラック以外のコーヒーを飲みたいとも思わない。
おもむろに、ポケットの内から『親』の形見でもある懐中時計を取り出す。
古風なものは、嫌いではない。むしろ好きである。尤もあの男は嫌いだったが。
彼はただ、その時刻があの時間のまま止まっているのを見遣るとそれを握りつぶして壊した。自分に時間の概念なんて必要ない、そう思ったからだ。永遠に、自分の時間は止まったままだからだ。俺もいずれはこうなるのかな、とため息混じりにふと自分の身体を見下ろす。
外見からは決して判らない、機械で出来たその体を。
翌日、ある科学者が殺されたニュースが申し訳程度に伝えられた。
※こっから先は1kbの電脳詩・キーワード。月ごとに変わる4つくらいのキーワードを、その電脳詩の中に埋め込んで書いていってみてください、というバージョン。これはたしか1月のもので、キーワードは『眼鏡』・『時計』・『コーヒー』……すいません、あとひとつ思い出せません。