Christmas Carol
   ―――the smallest requiem―――

 ……嘘だ。
 唯、それだけだった。
 その若者に謂えた言葉は。
 現実を否定すること。
 唯、それだけであろう。
 今宵は、聖夜。
 そんな日に……そう、まさしくそんな日に。事故で将来を誓い合った者との別れを余儀なくされた者にとって出来る事は。
 自らの嗚咽と共に聴こえるクリスマスキャロルは、彼にはレクイエムの如くに聴こえた。

◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 頃は宵。
 風は冷たく、下弦の月は今将に新月に為らんとしていた。
 都会の夜空は暗い。
 それだけは、変わらない……いや、前に比べて夜空は更に暗くなったか。
 不変かわらず。或は、永遠かわらず……。
 「月、か……お前はいつも変わらない。だがそれで寂しくは無いのか……?」
 青年と呼ぶには少々年が行過ぎているが、中年と呼ぶのを躊躇わせるような外見の男性が、空に向かい呟いた。
 無言。
 後に、静かな……笑み。
 自嘲がそれに一番近いであろうか。
「そうだな……それこそ俺の求めているものなのかもしれない……」
 だが。
 だが、意味は有ろうか。
 愛すべきものの居ない、此の世界での『永遠』など……

 あれから、十数年の歳月の流れた後のある男の呟きである。



※とまあ、こんな風にssっぽいのもあります。これも、ある小説の1シーンです。

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