残ページ サイズ変えるも また一興 



   紫陽花や 雨をはじきて 輝けり



   紫陽花や 日差しの中に しおれゆく



   けだるさや 祭りのあとの 心地よさ



   新米や いつものおかずが 御馳走に



   針の音 共に響きし 虫の唄



   にわか雨 公園にシャベル 独りきり



   喧騒を離れて 猫は朝寝せり



   雲の端に わずかに顔出し お月様



   栗の木を 自転車よけて 通りけり



   号外も 半日経てば 鍋敷きに



   秋風や 空の高さに 驚きぬ



   独りごと 妙にふえたる 孤独感



   積ん読に 資料と名を付け 言い訳し



   半月や 欠けてゆくとも 満ちるとも



   遮断機の 降りて雨つゆ 気づきけり



   句をひねる 想い出せぬも また快し



   黄昏の 柳葉越しに 月を見ゆ



   雨戸閉め 屋根にかかるは 満月か



   参拝の 江戸より続く街並に 鼠色した梅の香吹きぬ



   葦の池 鴨の泳いだ迹二つ



   ジャスミンの 香に誘われて 迷い道



   この空に出逢えるならば 残業をしてもいいかと 思う黄昏



   月を見る 余裕は欲しいと あきらめる



   名月に 一句浮かばぬ 其もまた楽し



   朝の陽や 美しき世界と 変われぬ私



   「いつの日か」 思いしことの 近づく怖さ



   新緑や 鳥の名こそは 知らねども



   我楽久多(がらくた)に囲まれ 我に還る刻(とき)



   診断書 壊れた歯車 はじけとぶ
                         ―うつ―


   頭痛薬 鞄の奥底 御守りだった



   冬の朝 言い訳ばかりを 考える



   ねこをなで ぬくもりこいしと つぶやきぬ



    
【HOME】