己が字の デカさを 『自信』と名付けたり
書き記す 術だけ再び 知りにけり
行数が 増えたる紙に ただビビり
残ページ サイズ変えるも また一興
とき過ぎて 今はむなしき 始業ベルの音
道のりの風の色さえ 桜に染まりて
片付けを せねばせねばと思う毎 物の失くなる我が自室
晩酌の傍に光るる大理石 其の名を人は 胡麻豆腐とぞ謂ふ
呟く言葉も見つからず 空虚なる我が心更に満たされず それでも指は筆を求むる
ディスプレイ越しだって 別に、構いはしないんだ 誰かと会って話せるのなら・・・
父よりも先の駅すぐ 雪の朝
残雪の氷踏みしめ聴く音よ 昨日の景色は 幻夢(ゆめ)か現実(まこと)か
独りごと 妙にふえたる 孤独感
孤悲といふ 文字に思いを 馳せてみる
桜詠み 先人たちへ 思い馳せ
途中下車 見知らぬ街の 探検を
蚊遣り火に 夏の残り香 薫りけむ
秋の夜の 空にも一人 ホタル族
―火星―
席譲り景色の前に 立ってたき 長月の空の青の眩しき
五十年道を歩んできた者の 呟(つむ)ぎし言葉に 敵う筈なく
名も知らぬ 赤き実ひとつ 秋の庭
星の海 月だけ独り輝けり
切り取った 街を月だけ 追いにけり
―車窓―
病床に在りしを詠いた 子規のごと 我はこの目を 機械と成さしむ
頁めくる その瞬間の 楽しさに
そよぐ風 なびく雲にも 心躍りて
―春―
「いつの日か」 思いしことの 近づく怖さ
新緑や 鳥の名こそは 知らねども
我楽久多(がらくた)に囲まれ 我に還る刻(とき)
曇り空 二人の恋路は いかがならん
―七夕―
恨めしき暑さの中の光さへ 美しき哉 天子の梯子
虫のこゑ 夜の匂ひに 乗ってくる
残された 時間に焦りは 感ずれど
涼風に 混じるわずかの 侘しさや
秋の蚊に 涼風の眠り 邪魔されて
リモコンと みかんが友の 寝正月
水貯まり 忍者が一陣 駆けぬけて
―夕立―
幾条の光の梯を 登りきて 彼(あ)の雲の上 午睡がしたい
意思疎通 己の欠如を思い知り 愛されてもいる 事実が重い
「ありがとう」 ただそれだけが いいたくて