――わたしを根底から変えた、宇宙論。

 師とどういう経緯でいつごろ出会ったのかはとても不明瞭な記憶だ。
 わたしの師は、わたしに様々な人生観を教えてくれた。
 師がどういう存在であるのか、わたしは知らない。
 知らなくてもよかったからだ。
 盲いた剣しかないわたしにとって、師の語る『世界』は――
 いや、『宇宙』は、とても興味深いものだった。
 学者なのかと問うたらそうでもありそうでもない、というあいまいな答えを返された。
 確かにとくに物理学と数学においては深い知識と見解を持つ方だった。
 わたしには細やかな定理や数式はよく理解できなかったが、よく理解できないままでただ彼の語る一種の『理論』を受け入れた。
 スーラの昔話とも、聖典とも違う彼の語る宇宙論はとても魅力的だった。
 星の明かりをもう二度と見ることのかなわなくなった目にも、その神秘は好奇の炎を焚きつけた。
 もちろん、経典の民である自分にとってそれは口外できるものではなかったが。
 彼は――かわった人間だった。
 どこの誰かなど知らない。
 ただ彼は、自分のことは道端に転がる石ころと同じなのだと言った。
 石ころに興味を示せたからこそ、わたしの世界は変わった。
 どんな好奇心も宇宙論も結局は
 正しいといえる
 だけの理由はおのおのが持っているのだ

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