023.愚かさの生贄
――とても、悔しい。
そう、名づけた。いや、現実にそこが理想郷であるかなんて、正直な話どうでもいい。
結局のところボクは、あらがっていたかったわけだし、そしてたぶん……
逃げ出したかった。
いろいろなものごとから。さまざまな制約から。
だから、名づけた。それらすべてから逃げ出せる場所の仮称を。
けれど、理想郷なんて、"UTOPIA"なんて、実のところはそんなものあるかどうかわからないし、さほど信じてもいない。
ただ……不意に思う。
ずっと、苦しみぬいてきたことから、ボクは解放されつつあるような気がする。
とてもとても、純粋な感謝に近い気持ち。それがボクの中にわきだして、だんだんボクの中を埋めていっている。
旅を始めてから……いや、たぶん、君とであってから。
けれど、まだボクは開放されてない。それと対極にある、ボク自身のいやしいいろんな気持ちから。
だからボクはボクも含めた人間といういやしい生き物の
愚かさの生贄
としての生活から開放される、それだけを望んでる。