014.人は、海のようなもの
――『みてみたいもの』が、またひとつ増えた
どこでそんなことを知ったのだったっけ。
たぶん、また、彼が語ったことに変わりはないと思うのだけれど。
どうやら、わたしたちの体は、海とほとんど同じ成分でできているらしい。
大半が水で、あとは塩だの炭だのと似たようなもの。こむずかしい元素の名前もあった気がしたが忘れてしまった。
たしかに、人は生まれる前から母親のおなかの中で、羊水の中に浸かってる。なるほど、海というのはあんなものでできているのか。そう思うとかえって気持ち悪い。
あんなものが集まって、あおく見えるというのならばなお不思議だ。
そう、わたしが育ったのは、はるか遠くの砂漠の地。
だからと言うわけでもないけど、ときどきわたしは、自分が砂の中から生まれてきたような幻想さえ抱く。
わたしの体は死んだ砂でできていて、
死んだ蟲たちのかけらが砕けてできた砂でできていて、
ほんの一時、わたしというかたちをかたちづくって。
だけど。
それは死んだ砂だから、
まわりを壊して、殺して、滅ぼしてしまう。
そんな、不思議で不気味な幻想を不意に抱いてしまうのだ。
水は、
海は、
命を与えて、そして奪うもの。
あるときは穏やかで友好的。
あるときはしけて、悪意に満ちている。
すべてを包み込んで、受け入れることのやさしさと恐ろしさ。
わたしにはその特性を同時にもつということが、いまいち、想像することができない。
人は、海のようなもの
けれど、わたしは海を見たことはない。