"SS"

 立ち上げる
 新規ファイルを作る
 それだけのことを、どれだけこのソフトはしてこなかっただろう
 ただそれだけの作業がいとおしくてならない
 無漂白の神とにらめっこしながらタイプする作業が待っているのは
 本当に何年振りだろう

 ただいま、と声をかければ
 つづったモノがお帰りと声をかけてくれる

 どんなに捨てても捨てても
 いいや、むしろ余分なものをはぎ取ればはぎ取るほど

 『私』がそこにいる

 ああ、悩んでいたお前は決して空虚でなどなかった
 空虚であることを憂いてつづることができていたのだから

 再びの、私との対話、書くこととの対話

 混沌の中で、私は生まれていた

 この喜びを何としよう

 ファイル名は――コレにしよう。




 "SS"

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