予期的悲嘆

 ――怖い。
 まだその事象は始まってすらいないというのに
 そう思うと馬鹿馬鹿しい

 なのにわたしは恐ろしい
 ならば、努力をしろといわれればそれまでだけど
 努力のしかたじたいがよくわからない
 必死になるということ自体がどうもよくわからない

 「私」を出せといわれるのだけれど
 例えばこうして紙に自分の思ったことを
 ただやみくもに書きつけてゆくこと以外に
 どうやって私にそれをやれというんだろう?

 アクティブに、アグレッシブに
 さらにいうならセンシティブに?
 まあ、それが目標っていえば目標なんだろうけど

 『おこりうること』はあくまで『おこりうること』で
 まだ実際におきてさえない、ゼロどころか
 マイナスとさえいえる位置にあるんだけど
 けれど――確実におこりうるのはたしかだから
 だから、余計に恐ろしい

 私は
 私は……そこで、潰れてしまわない?

 それほど弱い存在だなんて自覚はないし
 正直なところ私はむしろ図太いほうでさえあるけれど……

 それでもまだ
 予期的な悲嘆を行わずにはいられない

 結局私は時の歩みそのものが恐ろしい



※タイトルの『予期的悲嘆』は、ターミナルケアで出てくる用語ですが、まあ、字面どおりの意味です。ちょっとね、人生で立ち止まる?(らざるをえない?)時期があったりしたんですよ。

 戻る  トップへ  進む