egoistic

 そんなに
 そんなにまでも両の手にいろんなものを持って

 不意の土砂降りの雨に
 街往く人は傘を差し
 駅のホームのアスファルトは
 うす汚れたねずみ色から
 矢張り、うす汚れた茶色に黒にかわり

 ふと傍らに目をやれば
 茶色いソバージュの髪の
 不自然につりあがった細い眉の
 若い女がしゃがみこんで

 さっき濡れた折り畳み傘?
 ああ、確かにそれなら手に持つ以外になかろうが
 ちょっと一服?
 うざったるい雨の中、夕刻前の長い電車の待ち時間、
 そうしたい気持ちくらい私にもセツにわかるが
 でも喫煙所はあと2メートル先
 おまけに階段前にしゃがみこむと通行の邪魔
 ずい分オシャレな手さげの鞄
 けれどピンク色が可愛いなんてただの妄想
 ああ、そこからケイタイを取り出して?
 トモダチとメール?
 繋がってたい気持ちくらいはまあわかるけど

 そろそろ その手はいろんな物をもてあまし気味
 両の手にもてるだけのものを持とうとして
 ほんのちょっとバランス崩せば
 全部落として不思議じゃないんじゃない?
 そうまでしてそれだけのことをする価値って……何?

 まあもっとも
 空の両手を動かすでもなく
 不意に手に入れた時間に
 呆けながら妄想を育てていた私には
 吐息を漏らすくらいしかできることもないけど

 ……考えてみれば
 マナー違反を見逃して
 詩にまでしたためる私のほうが
 よっぽど手におえない偽善者か

 ……思うと、吐息を漏らすくらいしか私にできることはない



※……折り畳み傘持ちながら、タバコもって、ライター持って火ィつけて、電話持ってメールやって?
 どれか落とすよ、あんた。ってゆーか喫煙所あるんだからであっちですえよ、そこ階段の前だよ!
 な女がいたもんでむかつくの通り越して呆れて詩ィ書いてみたりして……
 ああ、さらに手におえない自分。くわえて、そーゆーの思いっきり批判しときながら先日きづいて見るとケイタイで電話しながら切符買ってた(だって後ろに人いなかったし!! あれそこそこ緊急の用事だったし!!)自分も事実……

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