tide over

 止して頂戴
 冗談じゃないわ

 あたしは単にあたしで居たかっただけよ
 今更何がしたいって云うの?
 一体どうしたいのよ?

 私を鎖に繋ぎ止めるなんて不可能だってコト
 あなたには当然わかると思っていたのに

 別にあなたである必要なんて何処にも無かった
 この一瞬を楽しめればそれでイイじゃない?

 ほら、極上の葡萄酒を含んで
 紅い口付けを交わせば
 まるで、血の海を泳いでいるよう
 溺れてみたいと思わない?
 この感覚、麻痺しそうなまでの快感

 そう、あたしはもっと酔いつづけてたかったの
 互いに其の感覚に酔っていただけだったの
 少し……
 独りにさせて頂戴

 夜風が……浴びたいわ



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