新緑の芽吹く季節。
其れまでの、淡い、パステルカラーの世界から一変して植物たちは、こい『あお』を競い合う。
「なによ?『これ』」
彼女は、そんな季節の生まれだった。
「わからない? プレゼントだよ――誕生日だろ?」
『彼』はむしろ子どもじみてすらいる悪疑心にも満ちた瞳で呟いた。
凄く凄く、綺麗な色のその瞳で。
「そうね……嬉しくないっていったらウソになるけど」
『彼』の瞳は、かなり特殊な色のオッド・アイ。
「けど?」
右は黒色、左は――『金色』。
「ずいぶんと費用のかからないプレゼントだな、って」
月、を思わせる。
なんとも、美しい色。
「ばれたか……金欠なんだよ、実は今」
とてもとても綺麗な色の、その瞳は笑みを形作っておきながら淋しさにも似た哀しさを隠し切れてはいなかった。
「……くやしいけど、それでもこれは『愛』や『恋』とはちょっと違う気持ちよね」
其れにつられてすらいるような、少し、淋しげな瞳で。
彼女は小さく呟いた。
自分の唇を、彼女の唇にそっと押し当てる事。
其れが、『彼』からの彼女への誕生日のプレゼント。
「友情、も悪くないと想うけど」
例えば、『彼』が女性だったとして。
自分が適うことなど、何一つすらない。
そんな、寂しさ。
「『男』と『女』のぉ?」
ただ、まあ問題があるとすれば『彼』は今は――
「……って謂うより男と男の友情だろ? 此れって感覚的には」
ああ、やっぱり綺麗な色の瞳だ。
この瞳が笑うしぐさが、どうしようもなく無性に好きだ。
「ま、確かにね……」
そう思って。ただ少し、呆れたように彼女は笑った。
新緑の芽吹く季節。
二人はこれから二人に起こる運命という名の悲劇を知らない。
※6月キーワード『こい』・『青』……やっぱり思い出せません。そしてくらげは一時閉鎖され、復活し、また閉鎖されました。
ですが、Giftで1kbの電脳詩に似たコーナーを始めたのでぜひどうぞ。