sepia dream

 けれど
 けれど、この降りしきる蒼い雨の中
 私はもう独りぼっちじゃない

 あの七色の風はもう吹かない
 暖かいオレンジの風も
 凍て付くような白い風も
 爽やかな緑の風も

 もう、戻らない過去

 セピアブルーの思い出に
 落とされる、アリスブルーのひとしずくの涙

 もう、戻らないあたたかい日々
 みんな一緒にいた時間
 みんな笑ってた
 一緒にいる、それだけの事が幸せだった

 もう、戻れない時間

 結局すべては過去になってしまった
 もう戻る事なんてできなくて
 思い出せるうちはまだ良くて
 最後には、きらきらしたきれいだった感覚しか残らない

 涙は……枯れるくらい流した

 緋色の夕焼けに映える木々の緑
 みんながいた帰る家
 自分達の魂のあるべき場所

 もう、すべて存在しない
 ここにあるものは、似ているようで全然違う

 でも
 でも……
 それで自分の前の道が途切れてしまった訳じゃない
 透明な道は、自分の前にちゃんとある

 そして
 今、私は独りじゃない
 この降りしきる蒼い雨の中
 魂さえさらっていきそうな緑の風の中
 私はもう独りぼっちじゃない……

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